今週のブログも先週に引き続き、アメリカのパリ協定離脱について触れていきたいと思います。
アメリカの意見
今回の離脱に関して、アメリカ国内では、意見が2つに割れていました。
一方には、温暖化対策は経済成長を阻害するとして、パリ協定離脱を支持する立場があります。今までアメリカの主要なエネルギー供給源だった石炭産業や、経済成長を支えてきた重工業産業がこの立場をとります。これらの産業にかかわる企業や労働者層はトランプ政権の支持母体でもあります。トランプ大統領は、以前から「地球温暖化はでっちあげ」だとして温暖化問題の存在そのものを否定し、パリ協定からの離脱を大統領選挙戦での公約としてきました。
他方で、温暖化を深刻な問題ととらえ、温暖化対策で国際的リーダーシップを発揮することがアメリカの役目として、パリ協定残留を主張する立場があります。再生可能エネルギーや電気自動車、金融、IT等の産業は、二酸化炭素排出量を減らしながら経済を活性化させる新たなビジネスモデルを構築し、こちらの立場を擁護してきました。
アメリカでは伝統的に前者の立場が強く、京都議定書不参加を表明した2001年の頃には、不参加を批判する声はあったとしてもきわめて少数派でした。しかしこの20年間で地位が逆転しつつあります。
この逆転を示す一例が石油産業です。
石油産業は数年前まで石炭産業とともに温暖化対策に強く反対してきました。温暖化が進んで北極圏の氷が解ければ新たな石油資源を開発できることにもなります。しかし、パリ協定と前後して、石油産業は新たに天然ガス開発や再生可能エネルギーにも力を入れるようになりました。
ある大手石油関連企業では、「地球温暖化が石油会社の経営に及ぼす影響を調査し公開すべき」という意見が株主全体の6割を超える支持を得る事態となりました。その企業の最高経営責任者だったティラーソン氏は、今年初めに国務長官として任命された時までは、温暖化対策に否定的な発言をしていたのですが、その後数か月間で態度を変え、今回のパリ協定離脱に対しては反対の意見を表明していました。
国内でこのような形勢逆転があった結果、トランプ大統領の演説は、切れ味の悪いものとなりました。パリ協定から離脱すると公言することで、自らの支持者に対して公約を守ったことをアピールすることには成功しましたが、地球温暖化は嘘であるといった、問題そのものを否定する発言は聞かれませんでした。
アメリカの今後
アメリカのトランプ政権は、これまでもパリ協定の見直しが必要だと公言していたが、改めて今回、今後の温暖化対策に関して、「アメリカは今後も現実的で実用的な対策を講じていく」と強調しました。
今までアメリカの主要なエネルギー供給源だった石炭産業や、経済成長を支えてきた重工業については、パリ協定の離脱は自由な経済活動に繋がるためメリットがあると言えます。
しかし、世界NO1エネルギー使用大国であるアメリカが離脱してしまえば、当然それに伴いエネルギー使用量の抑制は進まず世界的な省エネ推進は後退することになります。
アメリカファーストを掲げるトランプ政権にとっては、アメリカの経済力が結果的に強くなれば、パリ協定も1つの手段としか考えていないと思うのですが、世界的な省エネ推進が抑制されることは、様々な意見が飛び交うと思われます。
まとめ
正解最大のエネルギー消費国であるアメリカがパリ協定から離脱してしまうと今後はどのような影響が出るでしょうか?今後の動きによっては日本でもパリ協定をどのように捉えていくか異なってくると思うため是非注目していきたいものですね。