今回のブログも、電力容量市場の仕組みや課題について、ご紹介していきたいと思います。
電力容量市場の仕組み
アメリカの事例をもとに、落札価格を日本円に直すと、およそ6,000円/kW・年となります。100万kWの発電所であれば、年間60億円の収入となります。発電所はこの市場収入に加えて、販売した電力量に対する収入が得られることになります。年間の設備利用率が10%以下のピーク電源でもこれだけの収入が得られるのであれば、発電所にとってありがたい話です。
もちろん、その負担は小売電気事業者、ひいては消費者が負担することになります。
ただし、このモデルでは容量市場で支払われる分だけ、卸電力市場の価格が安くなるので、消費者の負担は変わらない、ということになっているし、PJMの場合は、実際にそのように評価されています。
容量市場の問題点
日本では、容量市場の導入にあたって、経済産業省が主導を取り、「総合資源エネルギー調査会」「基本政策分科会」「電力システム改革貫徹のための政策小委員会」で方向性が議論され、同じ「総合資源エネルギー調査会」「電力・ガス事業分科会」「電力・ガス基本政策小委員会」でPJM方式での導入が示されたという経緯があります。2016年から2019年にかけての議論です。
もっとさかのぼると、2013年の「総合資源エネルギー調査会」「基本政策分科会」「電力システム改革小委員会・制度設計ワーキンググループ」で、供給力確保が論点として取り上げられており、容量メカニズムも紹介されています。
これら審議会を通じた議論において、容量市場に対してはさまざまな懸念が示されています。
例えば、電力・ガス基本政策小委員会の制度検討作業部会では、容量市場を議論するにあたって、最初の段階で、新電力を代表するオブザーバーの東京ガスから、ベースロード電源への適用についての疑問が示されています*。
これについては、早い段階で基本的に全電源を対象とする方針が固まったが、懸念はそのまま制度に残されたということになる。
他のオブザーバーからも、既設の電源と新設の電源とを区別してほしいという要請がありました。これについては、既設の電源に対する控除率を設定することで決着しています。
この他、需要曲線が恣意的になりやすいこと、市場支配力の強いプレーヤー=旧一電の価格操作をいかになくすか、などなど、さまざまな指摘がなされつつも、最終的には容量市場ありきの事務局提案がほぼ認められ、現在に至っています。
日本で導入された容量市場が抱えている問題は、既設・新設を問わないこと、ベースロード電源や非FITのVREを含めた全電源を対象としてしまったことにつきるのではないしょうか。
まとめ
次回も引き続き容量市場に関する情報をお伝えしていきます。
これを機会に容量市場とはどういったものなのか理解を深めていただければと思います。