こんにちは。ライフ空調システムです。
今月のブログは『脱炭素についてのニュース』を取り上げてお送りしています。
今回も排出量取引制度についてご紹介します。
全部で3つと長編となりましたが、気になる排出量取引制度のデメリットと、
最後に、実際に日本でのこれまでのCO2排出権取引の実績のご紹介で最後になります。
ぜひご確認ください。
■国内排出量取引制度のデメリット
前のブログで紹介した通り、国内排出量取引制度にはさまざまなメリットがあります。
しかし、必ずしもメリットばかりとは限らず、デメリットが存在することも事実です。
具体的にどのような懸念が生じるのか、デメリットとして考えられるポイントを
2つ紹介します。
①排出枠の設定が難しい
国内排出量取引制度のもっとも大きな課題は、企業ごとにどの程度の排出枠を
設定すべきかを検討するのが難しいことです。
たとえば、排出枠に余裕がありすぎると多くの企業が上限まで達しないことになるため、
排出権取引の市場としては売り手過多になってしまいます。
一方で、あまりにも排出枠を低く設定してしまうと、企業にとってCO2削減のための
コストが増大し経営を圧迫してしまうでしょう。
CO2排出枠を企業間で適正に取引するためには、適正な排出枠が設定されていることが
大前提といえます。この前提が崩れてしまうと、そもそも排出枠の取引が成立せず、
全体としてCO2の削減が見込めなくなる可能性もあるのです。
②国外へ移転する企業が出てくる
国内排出量取引制度は日本が今後導入を検討している制度ですが、
国によってもCO2排出権の取引制度は異なります。
経済のグローバル化が進んでいる現在、生産拠点を日本国内から
海外へ移転する企業は少なくありません。
その裏には人件費の問題や税制上の優遇措置、
サプライチェーンの構築のしやすさなど、さまざまな理由が存在します。
国内排出量取引制度は、もともと環境配慮型の経営を行ってきた企業にとっては
メリットの大きい制度といえるでしょう。
しかし、すべての企業はそうとは限らず、なかには排出枠内に収められることが
困難な企業もあります。
日本で実際に国内排出量取引制度が実現されると、排出枠内に収められない企業は
国内での事業を諦め、海外へ移転するという選択肢をとる可能性も考えられます。
海外へ生産拠点が移ると、国内の雇用環境悪化や税収の減少など、
さまざまな面で影響が及ぶ可能性もあります。
■日本におけるこれまでのCO2排出権取引の実績
国内排出量取引制度は検討段階であり、今後国として制度を運用していくかは
正式に決定していません。
しかし、自治体単位で見てみると、
東京都と埼玉県は独自のCO2排出権取引を制度化し運用した実績があります。
東京都は「温室効果ガス排出総量削減義務と排出量取引制度」、
埼玉県は「目標設定型排出量取引制度」
という名称で5年ごとに対象期間を設けて実施しており、
オフィスビルや工場など、事業所に合わせて削減義務率を設定しています。
運用結果としては、東京都の場合は2011年度に-23%、
埼玉県の場合は2010年度に-17.8%のCO2削減を達成しました。
ただし、東京都・埼玉県いずれの制度も、対象となっていた事業所は
年間のエネルギー使用量(原油換算)が1,500kL以上のオフィスビルや工場などに
限られます。
東京都であれば1,200の事業所が該当し、それ以外の中小規模事業所は
当該制度の対象外となります。
■おわりに
いかがでしたでしょうか?
今回紹介してきたように、CO2排出権取引にはさまざまなメリット・デメリットが
あります。
そのため、日本全体で国内排出量取引制度を運用するためには、
どの程度の範囲を対象とするか慎重な検討が必要といえるでしょう。
また、導入する場合においても、排出枠の設定は極めて慎重に行う必要があり、
一度設定して終わりではなく、社会的な情勢や各企業の取り組みなども加味しながら
調整していくことが重要になります。