こんにちは。ライフ空調システムです。
ことし7月14日、岸田首相は萩生田経済産業相(当時)に対し、
できる限り多くの原発の稼働を進めるとともに、火力発電の供給力を
追加的に確保するよう、指示しました。
今冬の電力需給の見通しが依然として厳しいためです。
電力不足に代表されるエネルギー問題は世界的な課題ですが、
いまそれが最も深刻なのがヨーロッパです。
ロシアとの関係の悪化に伴うエネルギー問題の深刻化、
特に天然ガスの不足を受けて、ヨーロッパでは今冬に計画停電が
実施される恐れが出てきています。
同国が今冬の計画停電を回避するためには、国全体のガス消費量を
2割削減しなければならないとのこと。
ドイツは従来、9月1日までに国内のガス貯蔵量を、
容量の75%まで溜める目標を立てていたが、これを8月13日に前倒しで達成しました。
10月1日には85%までに、11月1日には95%までガスを溜める計画です。
ただし、仮に100%になったとしても、ロシアが完全にガスの供給を停止すると
2カ月半程度で枯渇するという厳しい現実があります。
これから冬季を迎え、ガスの需要増が確実なのにもかかわらず、
さらなる消費の節約を呼びかけざるを得ないところに、
ドイツのエネルギー事情の厳しさを感じざるを得ません。
そうした状況の下で、ガスプロムは8月31日から9月2日までの3日間、
現在唯一稼働しているタービン施設の保守点検作業のために
ノルドストリームを停止すると発表しました。
■イギリスも年明けに計画停電を想定
9月に新首相が誕生するイギリスでも、2023年1月に計画停電の実施が
想定されています。
大寒波が訪れた場合、英国は4日間程度の電力不足に陥り、
天然ガスの削減策の発動と計画停電の実施を余儀なくされる模様です。
計画停電がささやかれる背景には、ヨーロッパ大陸からの電力輸入が減少する
との予想があります。
イギリスでは、ロシアの「ウクライナ侵攻」前の2021年秋から
ガス価格が高騰、中小のエネルギー小売事業者が相次いで破綻するなど、
早期から社会問題化していました。
景気の急回復に伴うエネルギー需要の増加に加えて、風力発電の不調による
電力供給量の減少が主な理由でしたが、そこにロシアのウクライナ侵攻が加わり、
ガス価格は急騰しました。
英国立統計局(ONS)によると 、イギリスが2021年に
輸入した天然ガス(金額ベース)のうち74%がノルウェー産であり、
ロシア産は5%弱に過ぎませんでした。
しかしロシアとの関係の悪化に伴い大陸の市場で天然ガスの需給がひっ迫し、
価格が急騰すると、英国もその影響を受けることに。
こうした状況を受けてイギリスでは、2017年に閉鎖された
国内最大のガス貯蔵施設(ラフ)の再開に向けた動きも加速しています。
■日本のインフレに欧州のエネルギー問題が影響する
日本では、最新7月の消費者物価が前年比2.6%上昇と、
前月(同2.4%)から伸びが加速しました。
とはいえユーロ圏(同8.9%)や米国(同8.5%)に比べると、マイルドな上昇率に
とどまっています。
日本の場合、欧米と異なり企業部門が原材料価格の上昇コストを負担するため、
消費者物価は上昇しにくいという特徴があります。
とはいえ、日本で2%台のインフレが続くことは、近年稀に見る状況と言えます。
インフレの主因は、ヨーロッパと同様にエネルギーにありますが、
日本の場合はさらに食品の値上げが顕著です。
両項目とも、ロシアのウクライナ侵攻に伴う市況高と
急速な円安の影響を受けています。
財価格の押し上げ幅は拡大しているが、一方でサービス価格は、
携帯電話の通信料が引き下げられた影響から、前年割れの状態が続いています。
仮に今冬のヨーロッパでエネルギー問題が悪化した場合、日本のインフレ率は
高止まりするかもしれません。
エネルギー問題の悪化を受けたヨーロッパでガスの価格が上昇した場合、
契約の方法が異なるとはいえ、日本もまたその影響を
ある程度は被らざるをえないためです。
当然ながら、いま日本が直面しつつあるコストプッシュ型のインフレの長期化は、
日本の景気に悪影響を及ぼします。
日本のインフレに、看過できないリスクを持つヨーロッパのエネルギー動向には
注視が必要です。