発電部門のエネルギー転換促進へ「足元で最低でも約3千円/t-CO2」
日本で発電部門のエネルギー転換により再エネの導入を加速させるには、足元で最低でもCO2の排出量1トンあたり約3千円の炭素価格を導入し、2025年までに約6千円、2030年までに約8千円に段階的に引き上げる必要があるとの英シンクタンクの分析があります。日本の再エネ普及拡大には炭素価格の導入が必要との認識であり、政府においてまずこのようなエネルギー転換を促進する水準の炭素価格が検討されることを求めています。
日本の鉄鋼・セメント・化学等の分野で脱炭素製品が競争力を有することができる水準に
また、発電部門以外を含めた全てのエネルギーに関して1.5℃目標に整合する水準の炭素価格を検討し、国内外にその妥当性を説明することが重要となります。
国際エネルギー機関(IEA)の1.5℃整合のシナリオでは、OECD加盟国における産業・燃料生産分野を含む炭素価格の前提を2025年時点で75ドル/tCO2(約0.8万円)、2030年時点で130ドル(1.4 万円)としています。
これを踏まえ、日本の鉄鋼、セメント、化学等の分野における脱炭素製品が競争力を有することができるような水準の炭素価格を将来的に実現することを視野に入れた検討が行われることを求めています。
炭素税と排出量取引は、特性に合わせて使い分けを
現在検討されているGXリーグの自主的な排出量取引(GX-ETS)について、任意参加や企業の自主的目標ではなく多量排出者を対象とするキャップ・アンド・トレード方式に分野ごとに順次移行し、1.5℃目標や炭素予算(カーボンバジェット)を踏まえた排出上限や排出枠の設定を行うことが必要であるとされています。
これにより2030年に向けて着実な排出削減が可能になります。
2023年度のGX-ETS開始までに、実績報告および検証制度を確立して迅速に導入後評価を行い、より実効的な制度化に向けて1.5℃目標に基づく日本の排出削減目標と紐づいたキャップ・アンド・トレード方式への移行を早期に実現することが重要です。
炭素税については既存の温対税を活用し、上流で課税された炭素価格が炭素排出量に応じて下流まで価格転嫁が行われるように措置することで、家庭部門や小規模排出者のような広範な対象に対して行動変容を促すことが必要となります。
脱炭素技術の開発・普及のための財源活用を
GX経済移行債や炭素税・排出量取引を財源とする資金の活用に関しては、浮体式洋上風力や次世代型太陽電池等の技術開発・インフラ整備といったイノベーションの加速と、各種の再エネ、省エネ設備・建築物、蓄電池、EVなどの既存の脱炭素技術の普及に対して、十分な財源配分が行われることを求めています。
加えて、部門の間で負担と支援のバランスが偏らないよう透明性と納得感のある財源配分が行われることを求めています。
再エネ転換等の「公正な移行」に財源活用を
多量排出設備の再エネ発電設備や蓄電設備等への転換を支援するとともに、それにより影響を受ける労働者にも配慮しスキル取得の支援や転職支援を行うことが重要となります。企業が事業転換の計画を立てる際に、労働組合や地域と連携し、労働者の公正な移行のための計画を立て、その実行に対して財政支援を行うことが望ましいものと考えられます。
また、低所得者層などのエネルギーに対して脆弱な世帯が取り残されることがないよう、化石燃料への依存を減らすための直接的な給付や支援が重要となります。