国土交通省は、2022年度の建設技術研究開発助成制度「政策課題解決型技術開発公募」の採択結果を公表しました。
今回、建設現場の生産性向上に向けたi-Construction推進やカーボンニュートラル実現に貢献する技術開発をテーマに公募を行い、新規課題として6技術、継続課題として11技術を採択しています。
国交省、建設現場の脱炭素へ技術開発支援 断熱塗料など6件採択
この公募は、民間企業・大学等を対象とした「一般タイプ」、中小企業を対象とした「中小企業タイプ」で構成されています。
一般タイプの新規課題では、11件の応募があり2件を採択しました。
このうち、名古屋大学は「断熱効果および遮熱効果を兼ね備えた環境対応型塗料の開発」で採択されています(交付予定額950万円)。
この研究では、熱伝導率が0.1W/m・K以下の断熱材として効果的な性質を示す構造発色性顔料を調製しています。
また、中空粒子の集合体は、屈折率のコントラストが大きいことから、太陽光の近赤外領域の日射反射率が50%以上を示す顔料になると期待できるといわれています。
中小企業タイプの新規課題では、8件の応募があり4件を採択しました。
このうち、エリジオンは「建物のライフサイクルマネジメントを目的とした3次元点群データを用いたBIMデータ自動構築システムの開発」で採択されています(交付予定額300万円)。
この研究では3次元CADの入力やBIMツールの利用を必要とせず、撮影した点群データに属性情報を付与してBIM化する「点群BIMデータ」の開発を着想し、意匠・構造・設備の点群データを統合した建物1棟の「点群BIMデータ」を実現・検証するためのプロトタイププログラムを開発しています。
継続課題は、一般タイプで応募7件のうち7件を採択、中小企業タイプは応募6件のうち4件を採択しました。
このうち、中小企業タイプの3D Printing Corporationは「コンクリート床スラブの厚さを半減する環境配慮型『床振動遮断メタマテリアル』の研究」で採択されました(交付予定額1000万円)。
この研究では、音や振動といった波動を抑制・制御することができるメタマテリアルを建築物へ応用し、従来これらの波動への対策のために用いられてきたコンクリート材料の使用量を建築物全体として25%削減した上で、最終的に全国の建設工事からのCO2排出量を年間3万5千トン-CO2削減することとしています。
具体的推進テーマを定めて公募、迅速に成果を社会に還元
同制度は、地球温暖化や社会インフラの老朽化、少子高齢化等、国や地域の諸課題の解決に資するための具体的推進テーマを国土交通省が示し、そのテーマに対して、民間企業や大学等の先駆的な技術開発提案を公募し、優れた技術開発を選抜し助成するものとなります。
そのテーマについて、迅速に(概ね2~3年後の実用化を想定)成果を社会に還元させることを目的としています。
2022年度は建設現場の生産性向上に向けたi-Construction やカーボンニュートラル実現に資する取組を推進するため、新工法、新材料を活用した技術開発について3月~7月に公募を行っています。